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日医工ジャーナル ダイジェスト

Vol.46 No.412 2020.4-6 ダイジェスト

AMED は医療シーズを社会に実装するための“要”

三島 良直氏
国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)理事長

―今回、理事長に就任されましたが、抱負をお聞かせください。
 【三島】前任の末松誠理事長は医療分野をご専門とされていましたが、私は元々、材料工学分野を専門とし、2018年まで東京工業大学の学長の任にありました。医療についてはいわば門外漢なのですが、日本の健康・医療の発展に寄与するために頑張っていきたいと思っています。それを実現するためにはAMEDの存在感をさらに高める必要があり、これからいろいろ努力していこうと考えています。
 健康・医療に関する国の政策に関しては、さまざまな省庁が連携していますが、その中でAMEDはファンディングエージェンシー(FA)、つまり公募によって優れた研究開発課題を選定し、研究資金を配分する機関としての役割を担っています。こうした私達の役割を国内外の方々にご理解いただき、健康・医療に直接関わる創薬や医療機器開発、さらに基盤的な技術の発展のためにAMEDを活性化したいと思っています。基本的には各省庁の健康・医療政策推進のご担当者、AMED内の関係者、AMEDで進めている6つのプロジェクトのプログラム・ディレクター(PD)の方々とコミュニケーションを取り、透明性をもって相談しながら事に当って行きたいと考えています。
―6つのプロジェクトとは何でしょうか。
【三島】「医薬品プロジェクト」、「医療機器・ヘルスケアプロジェクト」、「再生・細胞医療・遺伝子治療プロジェクト」、「ゲノム・データ基盤プロジェクト」、「疾患基礎研究プロジェクト」、「シーズ開発・研究基盤プロジェクト」という6つの統合プロジェクトをベースに、研究開発を支援するというものです。各プロジェクトに1人ずつ、6人のプログラム・ディレクター(PD)を配し、運営していくものです。
 このうち、医療機器に関しては「医療機器・ヘルスケアプロジェクト」によって、入り口の基礎研究から出口の実用化・製品化まで、一気通貫した方法を取って我が国の医療機器マーケットの強化につなげたいと考えています。

新型コロナウイルス感染拡大における
医療機器業界のBCP対策をどう考えるか

勝俣 良介氏
ニュートン・コンサルティング株式会社
取締役副社長 兼 プリンシパルコンサルタント

―BCPの基本的な考え方をお聞かせください。
【勝俣】BCP、すなわち、災害発生時に行うべき活動計画は平時に準備しておかなければなりません。私達は、BCPは3つの活動計画から構成されると考えています。  3つの活動計画の1つ目が「緊急時対応計画(ERP:エマージェンシー・レスポンス・プラン)」です。災害現場にいた人達の命を守るためにどのような行動を取ればいいのかを考える計画です。
 2つ目が「危機管理計画(CMP:クライシス・マネジメント・プラン)」で、いわゆる災害対策本部を設置して行う活動です。具体的には組織全体を掌握するための情報収集、意思決定、情報発信(リスクコミュニケーション)などの後方支援になります。
 3つ目のBCPは、先の2つの行動計画を実行する中で、自社事業の継続が脅かされ中断しそうになった際、そのような事態を防ぐために実行するものです。具体的には、たとえば「代替拠点による業務引き継ぎ」や今回のような感染症の場合には、重要業務の継続に必要不可欠な人員が動けなくなる場合に備えて、感染者を出さないようにするための「事業縮小」や「在宅勤務への切り替え」などがこうした活動計画に該当します。

「医師の働き方改革」に対する医療機器の貢献と展望
遠業務効率化、労働時間短縮化、経営効率化など広範な役割を果たす

裵 英洙氏
厚生労働省「医師の働き方改革に関する検討会」「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会」委員
ハイズ株式会社 代表取締役社長
慶應義塾大学特任教授
高知大学医学部客員教授
横浜市立大学医学部客員教授

―「医師の働き方改革」が国の施策の“一丁目一番地”として動き始めました。
【裵】安倍政権が政策の目玉として、全産業を対象とした働き方改革に取り組んでいます。中でも医師の働き方改革は非常に重要な位置を占めています。ご存じの通り、我が国の医療は医師の自己犠牲的な長時間労働によって支えられています。他の職種と比べても突出した長時間労働であり、もはや危機的状況と言えるでしょう。
 医師の健康への影響や過労死の懸念、仕事と生活のバランス、女性医師の割合の上昇等を踏まえて改革を進める必要があります。ただ、医師の場合、単純に労働時間を制限してしまうと、地域医療の提供体制が壊れてしまうという懸念が生じます。そこで、医師とその他いくつかの職種に限っては、5年間の猶予を経て2024年4月から時間外労働規制を実行する計画となりました。
 現在、全国の医師数は約32万人、そのうち勤務医が約20万人、今回の働き方改革は基本的に勤務医が対象になります。開業医もしくは病院経営者は対象ではありません。その20万人の病院勤務医を対象に調査したところ、年間の時間外労働が2,000時間超えの方が約10%、2万人いました。2,000時間超えというのはほぼ休みなしで、睡眠時間を削って勤務しているという異常な勤務実態を示しています。我々「医師の働き方改革に関する検討会」では、まず2,000時間超えの医師を最優先で救おうとさまざまな検討・議論を行ってきました。

コンプライアンスの徹底はトップの本気度にかかっている
~コンプライアンス部門はトップ直轄にすべきだ~

三村 まり子氏
西村あさひ法律事務所 弁護士

―企業倫理・コンプライアンスを徹底させるためのポイントは何でしょうか。
【三村】まず、企業トップの“本気度”にあります。医薬品や医療機器企業の中で人数が多いのは営業職です。他の業種に比べても圧倒的に多いと思います。営業職は誰の言うことを聞くかと言えば、自分を評価する直属の上司です。上司ではないコンプライアンス担当者がどんなにコンプライアンス違反をしないように言っても聞いてくれません。上司がコンプライアンス意識を理解し、部下にコンプライアンスについて話すくらいでないと会社のカルチャーは変わりません。部下から上司へとつないでいくと、最後はトップに行き着きます。「コンプライアンスは大事だ」と言っている一方で「営業成績を上げろ」とだけ指示していたら、現場は変わりません。どのようにコンプライアンスを守りながら営業成績を上げていくか、範を示していかなければいけません。
 現場に対して発言権のある人がコンプライアンスについて話してくれればいいのですが、実態はそうなっていないのが現状でしょう。医薬品業界であれば元MRで内勤に異動した人たちがコンプライアンスを担当している例が多いですね。その人たちが元上司や企業トップに対してコンプライアンスの重要性を訴えても、現場に浸透するようになるのは時間がかかります。
―コンプライアンス担当者は会社内では煙たい存在でしょう。しかし、重要な役割であることを社内で認めるようにするということですね。
【三村】そうです。その意識付けをするのは、トップのほか、営業本部長、営業の前線にいる人達です。その人達がコンプライアンスを理解していなければ、何も始まりません。だからこそ、トップがいかに本気でコンプライアンスを考えるかが重要なのです。コンプライアンス部門はトップ直轄としなければ、社内での徹底はなかなか進まないでしょう。トップがコンプライアンス部門をきちんとサポートすることも必要です。