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日医工ジャーナル ダイジェスト

Vol.45 No.408 2019.4-6 ダイジェスト

医療政策国内医療機器メーカーは「アジア健康政策」を追い風に海外へ雄飛を

武見 敬三氏
自由民主党 参議院議員
自由民主党 国際保健医療戦略特命委員会 委員長

 2016年5月、自由民主党は(以下「自民党」)「アジア健康構想 Asia Health and Well-being Initiativeに関する提言」を発表しました。提言を踏まえ同年7月に政府の健康・医療戦略本部において、「アジア健康構想に向けた基本方針」を決定。本部の下にアジア健康構想推進会議を設置し、2017年2月には官民連携のプラットフォームとなる国際・アジア健康構想協議会が発足しました。アジア諸国のオーナーシップを前提とした活動を開始したわけです。
 今年に入って、自民党の国際保健医療戦略特命委員会では、日本の医薬品、医療機器をアジア市場で展開していくことを目的に、その政策「アジア健康政策」を組み立てました。アジア各国の臨床試験や治験、規制に関わる分野をハーモナイズ(調和)し、途上国がより良質な医薬品や医療機器にアクセスできるようにすることが眼目です。つまり、ASEAN諸国に中国を含めたアジア各国において薬事規制の緩和を行い、医薬品や医療機器を流通しやすくする政策を日本がリーダーシップを取って進めるというものでした。
 先ごろ、この政策が自民党の政策として策定され、次いで、内閣に引き受けていただくことになりました。現在、予算を組み立てており、ほぼ国際保健医療戦略特命委員会の主旨に沿って予算が付くことになりそうです。
 特に考慮したのが医療機器です。医薬品に関してはある程度アジア各国の中での流通がスムーズに行われていますが、医療機器は遅れています。日本には非常に優れた医療機器メーカーが存在しているにもかかわらずその多くは中小企業であり、海外へ飛躍するための資本力が不足しています。こうした状況をどのように国がバックアップするのか考えなければなりません。

海外情報「医療機器の価値」を考える
医療だけでなく社会との関わりを重視していく時代に

池野 文昭氏
スタンフォード大学 主任研究員
MedVenture Partners株式会社 取締役チーフメディカルオフィサー

 医療的価値については医療機器に関しても同様でしょう。本来なら亡くなってしまう患者さんが医療機器によって元気に長生きできる、ということですね。社会的価値は、施設での生活を余儀なくされている患者さんが、医療機器によって自宅でQOLをエンジョイできる、そうしたことだと思います。保健基盤的価値ですが、「ヘルス」の“保健”であるとともに、“保険”基盤的価値と読み替えることも可能だと思います。医療機器の価値には、医療機器を使うことによって健康生活の基盤が支えられているとともに、医療費、社会保障費の急激な上昇をある程度抑えられるということも期待できるわけです。
 この3つの価値は、医薬品だけでなく医療機器に対しても同様ではないでしょうか。
 「ヘルス・テクノロジー・アセスメント(HTA)」が1つの方向性でしょう。医薬品や医療機器の経済的効果などを評価し、政策における資源配分に直接役立てるという考え方です。米国はこれを正式には採用していませんが、民間保険会社の考え方はHTAです。「我々が費用負担するのだから、コストパフォーマンスのいい製品にしてくれ」というわけです。実際、英国やフランスではHTAを導入しています。僕はHTAがこれから日本の進むべき方向だと思います。限られた財源を適正に分配するためには必要な概念です。いろいろ意見もあるでしょうが。

医療動向将来の各診療科必要医師数の推計をどのように考えるか

森田 朗氏
津田塾大学 総合政策学部総合政策学科 教授

 推計では、2036年に最も増員が必要とされるのは内科で1万4,189人、次いで外科4,363人、脳神経外科2,523人など計10領域で必要医師数の増加が、その一方で、減員が必要とされる診療科は精神科1,688人、次いで皮膚科1,414人、耳鼻咽喉科1,229人など8領域が提示されています。
 しかし、これはあくまでも過去の患者数を基に現在の医療状況を勘案し、一定の仮説に基づいて推計したものです。今後の人口動態や働き方の変更などで大きく社会状況や環境が変わると、推計も自ずと変わっていくことになります。
 医師の偏在や地方の医師不足が叫ばれ、医師の増員が必要と言われています。人口減少が進む中で本当に医師が不足しているのか、増員が必要なのかということを議論するために“医療従事者の需給に関する検討会”が作られ、特に医師の需給調整は喫緊の課題であるため、設置された医師需給分科会で密度の高い議論が行われました。議論のたたき台として、中でも医師不足が切迫した問題となっている小児科と産婦人科の両領域について、早急な調査が行われました。結論的に言えば小児科と産婦人科は少子化に伴い、2036年には必要医師数は減少という推計が出ています。検討会では、マクロ的に言えば、総人口が減少しているため、医師の増員は抑制した方がいいという結論となりました。

国際会議日医工主催「ISO/TC121神戸会議」報告
世界21カ国から104名が参加し活発に審議

 日医工主催の「ISO/TC 121(呼吸器および麻酔器に関する専門委員会)神戸会議」が、5月13日から17日までの5日間、兵庫県神戸市の神戸国際会議場で開催された。
 ISO/TC121国内委員会は、麻酔、人工呼吸およびその関連製品に関するISO規格の国内審議団体として、国際規格の審議に参画するとともに、日本の立場から新たな規格の提案を行っている。
 今回のISO/TC121神戸会議は、JISを整合化させることが義務付けられている国際規格を制定する上で、日本がアジアのリーダーとしての発言権をより強くし、国際規格に日本の意見を反映させることを最大の目的とした。
 本会議には世界21カ国から合計104名の参加があった。開催国の日本からは最多の23名が参加、さらに関連企業、麻酔科医など7名のオブザーバーも参加した。
 会議では分科委員会SC1(=Sub committee):「呼吸回路接続部と麻酔器」は開催されなかったが、「SC2:気管チューブと麻酔用付属品」「SC2/WG14(=Working group):熱および水蒸気制御」「SC3:人工呼吸器と関連機器」「SC3JWG12(=Joint working group):在宅呼吸器」「SC4:麻酔学用語」「SC4/WG1:呼吸器用語」「SC6:医療ガス供給設備」「SC6/WG3:流量計測機器」「SC6/WG4:医療ガス配管設備」「SC6/WG5:ポータブル液化酸素設備」「SC6/WG6:メディカルサプライユニット」「SC6/WG7:プルーム排出設備」「SC8:吸引器」が、それぞれ開催された。
 会議初日の5月13日にTC121全体会議、各SCの全体会議が催され、今回の神戸会議の方向性が示された。その後それぞれの会議室に移り、各SC会議が進められた。最終日の17日に各SCの全体会議、TC121全体会議が行われ、神戸会議の決議がまとめられた。