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日医工ジャーナル ダイジェスト

Vol.43 No.398 2016.9-2017.1 ダイジェスト

トピック単回使用医療機器(SUD)再製造の在り方、日本導入への課題

上塚 芳郎氏東京女子医科大学医学部 医療・病院管理学

―ここ1〜2年で、日本でも「単回使用医療機器(SUD:Single use device)の再製造」に関する議論を耳にするようになりました。議論のきっかけはどのようなものだったのでしょうか。【上塚】3年ほど前、米国で本来は使い捨てられるはずのSUDが再使用されているという情報を得ました。しかも、院内で滅菌処理を行うのではなく、SUD再製造を専門としたメーカーがあり、メーカーが持つ工場で滅菌、再製造、パッケージングが行われ、再製造品として販売され使用されているという話です。その後、実際に米国の病院とメーカーを聞き取り調査したところ、再製造のプロセスが非常にシステマティックに構築されていることがわかりました。私は米国の事例を日本でも応用できないかと考え、当時、日本医師会の鈴木邦彦常任理事にお話をしたところ、中央社会保険医療協議会の部会でもこの話題を取り上げてくださったようです。これが議論のきっかけの一つとなったのだと思います。
 米国では2000年頃からSUD再製造を行うメーカーが登場し始めていますが、残念ながら日本にはそのような企業はありません。しかし、国内では添付文書に「再使用禁止」と書かれているSUDを院内で内密に滅菌処理を行い、再使用している施設もあると聞いています。2015年7月には、神戸大学医学部付属病院にて心臓電気生理に用いられる診断用電極カテーテルと治療用アブレーションカテーテルの一部が、院内で滅菌され再使用されていることが新聞で取り上げられました。幸いにも感染症等の被害はありませんでしたが、このことがたいへん話題になりました。

医工連携医療機器開発推進を関係省庁と積極連携

遠山 毅氏経済産業省 商務情報政策局 医療・福祉機器産業室 室長

―このほど新たに医療・福祉機器産業室長に就任された遠山室長は、前職が製造産業局の素形材産業室長とお聞きしています。これまでのご経験から医療機器産業をどのようにご覧になっていますか。【遠山】素形材産業というのは鋳造・鍛造製品や金型などの金属組成加工を行い、主に自動車の部品を作る産業です。自動車のセットメーカーの下に部材を納入する中小企業がほとんどを占めています。ご存じの通り、自動車産業は大量生産が基本で、低コストで、かつできるだけ短期間で生産することが大命題です。
 一方、医療機器産業は取り扱う製品の種類が数十万種類と多品種で、しかもほとんどは少量ですから極めて対照的ですね。
 また、自動車産業は一般ユーザーが対象であるのに対し、医療機器産業は医療従事者がユーザーです。自動車の場合、さまざまな部品メーカーがセットメーカーの発注に基づいて生産した部品を最終的にセットメーカーで組み立てる体制ができているのに対し、医療機器の場合はセットメーカーも分野ごとに分かれ内製化する比率も大きい。これらが大きな違いだと思います。  これはまた、企業にとって大きなチャンスがあるということであると考えています。

展望国内初、福島に大型規模の医療機器開発支援センターがオープン

菊池 眞氏一般財団法人 ふくしま医療機器産業推進機構 理事長

【2011年3月11日の東日本大震災後、福島県は国に災害復興事業案を提出。事業案の一つとして「医療機器産業集積化」を提案しましたが、国から内容が平凡であり、確実に復興事業に貢献するという部分が明確でないということを指摘されました。震災前から副知事を務めていた内堀雅雄氏(現知事)は約10年間にわたって同県での医療機器産業の集積化を進めてきており、福島県には医療機器産業がぜひとも必要という信念を持っていた人でした。しかし、再提出の事業案をしっかりしたものにするためには専門家の力が必要なのは言うまでもありません。事業案を練り上げてくれる人物をいろいろと探す中、私に行き着いたそうです。
 私にとっても福島県が医療機器産業の集積地となることは非常に意義のあることだと思い、協力を快諾しました。その際、自治体が作る施設はとかく“箱もの的施設”と批判の対象とされるので、実質的な機能を持ち、医療機器産業にとって有用で使い勝手の良い施設とすることが大切、と進言。内堀氏は「全てお任せします」とおっしゃったので、そこから私は行動を開始しました。
 まずは医療機器開発に関係する経済産業省、厚生労働省、文部科学省、内閣府などを訪ね、福島県の災害復興には医療機器産業が必要であることを説明しました。各省ともかねてより医療機器産業が将来の国内産業振興の一翼を担うものになると認識していたことに加え、災害復興という目的にもかなうことから協力するとの回答を得ました。これにより事業案を固め復興庁に再提出、支援センターの設置が決まったのです。費用は135億円でした。
 支援センターの計画を発表した後、私のもとに本郷の医療機器メーカーの方が数名で訪ねてこられました。「県があらかじめ定めた試験料金等の高い定価を押し付けられるのなら、誰も利用しませんよ」とのこと。医療機器業界としては“官のお仕着せ”で作る施設なのではないかと大変危惧したわけです。

講習会「医療機器QMS省令のためのリスクマネジメント・設計管理講習会」を開催

【2011年3月11日の東日本大震災後、福島県は国に災害復興事業案を提出。事業案の一つとして「医療機器産業集積化」を提案しましたが、国から内容が平凡であり、確実に復興事業に貢献するという部分が明確でないということを指摘されました。震災前から副知事を務めていた内堀雅雄氏(現知事)は約10年間にわたって同県での医療機器産業の集積化を進めてきており、福島県には医療機器産業がぜひとも必要という信念を持っていた人でした。しかし、再提出の事業案をしっかりしたものにするためには専門家の力が必要なのは言うまでもありません。事業案を練り上げてくれる人物をいろいろと探す中、私に行き着いたそうです。
 私にとっても福島県が医療機器産業の集積地となることは非常に意義のあることだと思い、協力を快諾しました。その際、自治体が作る施設はとかく“箱もの的施設”と批判の対象とされるので、実質的な機能を持ち、医療機器産業にとって有用で使い勝手の良い施設とすることが大切、と進言。内堀氏は「全てお任せします」とおっしゃったので、そこから私は行動を開始しました。
 まずは医療機器開発に関係する経済産業省、厚生労働省、文部科学省、内閣府などを訪ね、福島県の災害復興には医療機器産業が必要であることを説明しました。各省ともかねてより医療機器産業が将来の国内産業振興の一翼を担うものになると認識していたことに加え、災害復興という目的にもかなうことから協力するとの回答を得ました。これにより事業案を固め復興庁に再提出、支援センターの設置が決まったのです。費用は135億円でした。
 支援センターの計画を発表した後、私のもとに本郷の医療機器メーカーの方が数名で訪ねてこられました。「県があらかじめ定めた試験料金等の高い定価を押し付けられるのなら、誰も利用しませんよ」とのこと。医療機器業界としては“官のお仕着せ”で作る施設なのではないかと大変危惧したわけです。