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日医工ジャーナル ダイジェスト

Vol.40 No.390 2014.7-9 ダイジェスト

在宅医療在宅医療に役立つ医療機器の開発を
最前線の医師が語る在宅医療事情

佐々木 淳 医療法人社団 悠翔会(機能強化型 在宅療養支援診療所)

―最初に佐々木先生がなぜ在宅医療を志したかについてお聞かせください。
【佐々木】筑波大学医学部を卒業、三井記念病院の消化器内科で5年半研修医として勤務し、その後、東京大学医学部の大学院に入り直しました。消化器内科でC型肝炎ウイルスの研究を行いましたが、自分に適した仕事ではないと感じて休学することにしました。
休学中に地域病院の勤務、経営コンサルティング会社へのアプローチなどいろいろな体験をしましたが、そんな中、新宿の在宅医療クリニックで週2回非常勤の医師として勤務する機会を得ました。在宅医療の現場は病院での医療しか知らない人間にとってはショックでしたね。
病院での医療は「病気を治す」ことがすべてです。言い換えれば「治せる病気を治す医療」です。病気が治せない場合、患者さんが病院にいる必然性はありません。そうした患者さんは帰宅して自宅療養することになります。 私が在宅医療で出会ったのはそうした患者さんたちでした。病院での治療を諦めざるを得なくても、患者さんには残りの人生があり生活があります。在宅医療はそうした「患者さんの生活を支える医療」であると理解しました。それならば、自分がやるべき医療はそこにあるのではないかと考えたわけです。
治らない病気を抱えて自宅に戻る。例えば末期がんの患者さんは治療をせずに死ぬのを待てばいいのでしょうか。そうではないと思います。完治できなくても、病気と折り合いをつけながら、普通の生活人として人生や生活を楽しむ。それをお手伝いするのが在宅医療の社会的役割だと考えています。

医工連携今後さらに加速する医療機器の開発・実用化・国際展開

土屋 博史経済産業省 商務情報政策局
ヘルスケアー産業課 医療・福祉機器産業室 室長

経済産業省は、平成22年度補正予算より、医工連携により、医療現場ニーズの高い医療機器の開発・実用化を支援すべく、「課題解決型医療機器等開発事業」(以下「課題解決型開発」)を展開してきました。事業を進めてきた中で、中小企業・ベンチャー・大学等による医療機器の開発・事業化には、医療現場のニーズ把握、薬事対応、販路開拓等の各開発段階においてハードルの高い課題が具体的に明らかになってきました。
すなわち、①通常の工業製品とは異なり、ユーザー(医療現場)側の情報を得ることが容易でなく、ニーズに対応した製品開発や改良が困難な点、②医療機関への販路開拓が容易でなく、具体的な販売を見据えた事業化・知財・ファイナンス等の戦略を立てて販売に結び付けることが困難な点、そして、③薬事関連制度に係る手続きを見据えた開発計画・臨床試験計画の策定や、臨床試験を行う医療現場の確保、薬事申請書の作成等について、専門性が高く対応が困難な点、というものです。こうした課題に対し、専門家による継続的な支援が求められています。

このため、これまでに得られた知見を踏まえて事業内容を見直し、本年度から新たに、「医工連携事業化推進事業」を開始しました。この事業は、高度なものづくり技術を有する企業等の新規参入や医工連携により、医療機器の安全性や操作性の向上など、医療現場のニーズ(アンメットニーズ)に応える機器の開発・実用化を進める際に、専門家として「伴走コンサル」をつけることで、事業化をより意識したものです。

イベント日医工創立40周年記念講演会・祝賀会が
パレスホテル東京にて最大に行われる

日医工40年の歴史をダイジェストに紹介した映像に続き、松本理事長の挨拶が行われた。冒頭、WHOに訪れた際に交わされた「先進イノベーション」と「リバースイノベーション」について語った。通常、イノベーションは先進国で生まれ新興国へと普及するが、これが逆に新興国で生まれて先進国へ普及するのがリバースイノベーションである。松本理事長は中国やアフリカを例に出して、先進イノベーションとリバースイノベーションそれぞれの重要性を説いた。
来賓では自由民主党幹事長特別補佐の鴨下一郎衆議院議員が最初に祝辞を述べた。鴨下氏は「優れた医療機器を国民に迅速かつ安全に届けるための議員連盟」の代表であり、その重要性を痛感している医師でもある。祝辞の中で、医療イノベーションの中でも医療機器の開発がいかに重要であるか、また、それを行うためには医療機器企業が先端技術を持つ企業とジョイントすることが必要であると語った。次いで、前述の議員連盟で中心的に活動している上川陽子総務副大臣が壇上に立ち、医療機器産業発展のため力を尽くしたいと挨拶した。
続いて、自由民主党の武見敬三参議院議員の祝辞では1977年に日医工主催で行われた第1回医用機器展についての紹介があった。第1回医用機器展においては当時日本医師会の会長であった父君の武見太郎氏が記念講演を行っている。そのことについての縁を感慨深く語っていた。経済産業省からは商務情報政策局 審議官の石川正樹氏の挨拶があった。石川氏はこれからの抱負として「医療機器産業振興に対する取り組みの活発化」、「積極的な海外展開」を語っている。
 一般社団法人日本医療機器産業連合会の中尾浩治会長より乾杯の発声、その後しばらくの歓談となった。民主党の柚木道義衆議院議員の挨拶があり、後半に入ったところで田村憲久厚生労働大臣が到着した。大臣は挨拶の中で今回の薬事法改正に言及し、これからの医療機器開発の発展に大きな期待を寄せていると述べた。

委員会活動改正薬事法説明会」の開催法規関連委員会の活動

去る7月30日、文京区本郷のホテル機山館で日医工主催の「医薬品医療機器等法の施行に向けた新制度対応のための説明・相談会」が開催された。11月25日に施行される医薬品医療機器等法を前にして、会場には80社以上の会員企業が集まる盛況ぶりとなった。説明会終了後、法規関連委員会の委員による相談会が開かれ、多数の会員企業が熱心に相談に訪れた。
新法では現在のGQP省令が廃止され、新たに制定される「体制省令」が許可の要件に加わる。体制省令は「新QMS省令に基づく品質マネジメントシステムを確立・実施し、その有効性を維持するための組織体制に関する基準」である。すなわち、新QMS省令に適合する「組織体制の整備」「人員の配置」が求められることになる。
現行、「製造販売業」は製造販売するすべての製品について「品質標準書」を作成・維持することとされている。しかし、新法ではGQP省令の廃止に伴い、新QMS省令に規定される「製品標準書」(製品ごとにその仕様および品質管理監督システムに係る要求事項を規定し、またはこれらの内容を明確にした文書)を確立・維持することになる。
また、現在、「製造業」について行われている「許可制・認定制」が、新法では「登録制」に改められ、許可要件が簡素化される。簡素化される主なポイントは3つ。 ①現行、製造業の許可要件である「薬局等構造設備規則」、いわゆる構造設備基準の適用が不要になる。②現行、許可申請に際し経営者の「医師の診断書」を添付しているが、これが不要となり、代わりに登録申請書には「疎明書」を添付する。 ③現行、「製造所の平面図」(製造所の詳細な内部平面図、製造用機械器具のリスト、試験検査用機械器具のリスト等)の添付が必要だが、これが不要となり製造所の場所を特定するための平面図(案内図・建物配置図のような図面)を添付する。