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日医工ジャーナル ダイジェスト

Vol.40 No.388 2014.3-4 ダイジェスト

鼎談日本の医療機器開発の実情と課題
硬膜外冷却カテーテルの開発をめぐって

森 厚夫 氏川崎市立川崎病院心臓血管外科  部長

小池 紀夫 氏ユニチカ株式会社メディカル開発部 部長

神谷 勝弘 氏泉工医科工業株式会社
常務取締役生産開発本部 本部長 

ーー閉鎖式カテーテルで硬膜外腔を冷却していくという発想はどのようなタイミングで閃いたのでしょうか。

【森】手術中のことですが、心筋保護注入回路の外側に水滴がついていることに気づいたことがありました。注入回路の中には冷却水が流れています。注入回路の中に冷たいものが流れているということは、回路自体も冷えているのだなとふと思ったのです。その時に、注入回路のミニチュア型を作り、その先端部を硬膜外腔の中に置けば脊髄を冷やすことができる、という考えが思い浮かびました。血管内治療用のマイクロカテーテルを2つに折り曲げてブタをモデルにして実験してみると、予想以上に温度が下がり、驚いたことを覚えています。
ーーその実験を行ったのは何年前ですか。
【森】西暦2000年前後、10年以上前のことです。その段階では臨床での使用は考えていませんでした。単に学問的な可能性、脊髄の冷却がどのような方法で可能なのか、またどのようなデータが出るのか、そうした興味から実験が始まりました。こうした技術は研究から徐々に生まれてくるものです。始めからはっきりした展望があったわけではなく、ひとつ解決するとまた別の問題が発生するといった具合で、少しずつ道が開いていくという感じでした。
マイクロカテーテルを使用した最初の論文を仕上げたあたりから、臨床での可能性を考え始めました。臨床で使用できるカテーテルの材質、形状を検討しなければなりません。いろいろと企業を探しているうちに、ユニチカさんと出会ったというわけです。

インタビュー医療機器購入の戦略をこう考える

正木 義博 氏社会福祉法人 恩賜財団済生会支部神奈川県済生会 支部長

済生会の特徴かもしれませんが、九州なら九州、関西なら関西とそれぞれ地域との結びつきが非常に強いため、本部からの指示に従って購入するのは難しい状況にあります。全国規模での共同購入に関するルールを作るために議論は重ねていますが、具体的に共同購入の対象として考えられるのはわずか10品目程度です。主に済生会グループ内の購買担当者の影響力が強く、交渉しやすい品目が選ばれます。今回のように診療報酬改定、消費税の値上がりなどがあっても、全体ですぐに対策が取れるというわけではありません。
私が済生会熊本病院に就職した頃は、各病院が個々に機器購入を行っていました。私はそれを変えようと思い、最初の赴任先の熊本で九州地区での共同購入を宣言しました。すぐに済生会グループの購買担当者を全員集め、共同購入について話し合いを行ったのです。山口県も含め13の病院が集まって共同購入した結果、全体で5,000万円下げることができました。購買担当者がその他の業務をいくつも兼務しているような小さな病院では値段交渉にも時間がかけられません。そういったところは私が担当を受け持ち、業務に当たりました。九州では現在でもその方式が残っているようで、薬剤などについても同じ方法が採られています。購入品目は地域ごとの特性があるので、共同購入を行う場合は九州ブロック、関東ブロックとブロック単位で進めることになっています。ブロックでの購買力は品目・量ともに本部が指導している数よりも多いですね。

40th
since1974
創立40周年記念プロジェクトについての抱負を語る

増田 順 副理事長プロジェクトリーダー

今回の日医工創立40周年記念プロジェクトは、これまでの40年間の歩みを振り返ると同時に、私達が社会にとってどのような集団なのかを再認識する機会にしたいと思っています。日医工は医療機器製販業を主とする企業の集まりですが、会員企業の範囲が大きいためか、外部から見るとひとつのイメージとしてつかみにくいという意見を耳にします。こうした意見を聞くと、日医工からの発信力の問題もあると思いますが、われわれが何のために存在しているのか、どのような集まりなのか、これから存在し続ける意義があるのか、といったことを改めて確認する必要があることを痛感します。日医工の存在意義を決めるのは組織内の人間ではなく、外部から日医工と関わっている人達だと思います。40周年という節目に際し、日医工の組織内にいる人間がまずやるべきことは、第一に「あるべき姿、ありたい姿、何をしたいのか」などを整理することでしょう。こうしたことを考えるのはたいへん重要です。さらに、理事会に対しても委員会の意見を発信していかなければと思っています。例えば、これまでに行ってきた組織活動の目的の中に情報の共有化があります。これは非常に重要なことですし、タイムリーな有用情報が多く含まれていることを考えれば、その活用の仕方や会員への伝達の仕方についてはもう少し工夫をする必要があると思います。これは1つの例に過ぎませんが、今まさに様々な活動の在り方を再検討する必要性に迫られていると感じています。

保険行政の情報を扱い、診療報酬改定への取りまとめを行う医療保険委員会

設立当初、医療保険委員会の委員の募集には各委員会に何名か選出するように依頼している。事務局は基本的に呼吸器、麻酔器、手術用メス各委員会から出すように告知した。会員企業に個別に依頼するとどうしてもその会社の色合いが強くなってくるため、偏りがないように各委員会の選出という形を取ったのである。また、呼吸器、麻酔器、手術用メスは普段から医療保険について議論しているので、委員会活動の第一歩としては扱いやすいと考えたのだという。3つの委員会は医療保険の対応について詳しく、医療保険委員会は良い情報交換の場となった。
日医工で本格的に医療保険に関する委員会が立ち上げられたのは、40年という歴史の中でほとんど初めてといっていいだろう。松本謙一氏が理事長に就任した際、医療保険に対する提言は日医工の仕事として重要であるとの指示があり、医療保険委員会の設立となった。制度に関わる委員会としては薬事法関連を扱う法規関連委員会があるが、表立って診療報酬に直接関わる委員会活動はこれまで行われてこなかった。その意味では、日医工の医療保険委員会が医療機器業界でどのような位置づけになるのか未知数と言える。しかし、それは日医工としても新しい活動領域に踏み出したことを意味する。日医工は2009年に一般社団法人日本医療機器工業会と組織変更し新たな第一歩を踏み出したが、この保険医療委員会の設立は正にそれを象徴しているように思える。

適正な修理・保守の推進と現状調査、講習会を企画する販売・保守委員会

【販売・保守委員会の主なる活動内容は「医療機器の適正な修理・保守の推進」、そして「医療機器の現状調査及び研修・講習会の企画、運営」であるが、その活動範囲は多岐にわたる。広汎な医療機器分野のほとんどの修理保守全般に対して活動を行っているので委員会として扱うテーマが多様で、さまざまな角度から問題が検討されている。近年、販売・保守委員会の活動の中で大きかったのは、公益財団法人医療機器センターと実施した第1回「治療機器・施設関連機器に関する安全管理実態調査」についてのアンケート調査であろう。これは2010年11月から12月にかけて行われたもので、主要都市の医療機関約2400施設にアンケートを行った。こうしたアンケート調査が行われた背景には2007年に施行された医療法の改正がある。医療機関に「医療機器に係わる安全確保のための体制の確保」が義務づけられたため、医療機器に対する保守点検の管理が厳しくなったのである。活動の方向性としては各医療機関の医療機器安全管理責任者の方々との医療機器の品質・有効性・安全性の確保の重要性を共有すること、さらに、医療機器の保守点検に対しての診療報酬加算の提言を行うなどがある。2013年には第2回目のアンケート調査も行われており、現在集計も終わり、その結果は近々、日医工ジャーナルそしてホームページ上で発表される。