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日医工ジャーナル ダイジェスト

Vol.39 No.381 2012.4-6 ダイジェスト

UDIは国際化を無視して語れない

落合 慈之 先生NTT東日本関東病院 院長

外国は医療においても最終的に経済性のために使用しています。海外では一つの医療機関で扱う患者の数が決定的に違います。例えば、人工関節の置換術は日本の病院では多くても年間100〜200件ですが、米国の病院は1万例にも上ります。心臓カテーテル操作術にしても行っている病院では何万例という数です。そうした医療状況の中においては、手術に使用される医療器具や医療材料の管理の能率の悪さは大きな損失へとつながっていきます。なぜ、日本では医療現場にUDIが普及しないのか。つまり、これは日本の医療機関はUDIによって圧倒的に便利になるほど数多くの症例をこなしていないということでしょう。まだ人力で乗り越えられる症例数だということです。もう一つ決定的に違うのは、日本が国民皆保険である点です。医療を決まった値段で行わなければならない。UDIを導入してもコストとして回収できる仕掛けがないということも、医療現場へのUDI導入に大きなインセンティブが働かない原因のひとつだと思います。

座談会日医工におけるIT標準化への取り組み

—DPMは、鋼製器具本体に直接UDI(個別識別)コードを刻印し、それらをデータベースで管理することにより、医療の安全性に寄与することを目的としています。IT標準化の意味や意義とともに、鋼製器具への識別コードの直接表示をどのように啓発していくか、というお話をしていただければと思っています。
【住谷】 今から20年前、滅菌コンテナが日本で初めて導入された頃は、コンテナ単位で器械セットを管理することが一般的な認識でした。その後、1990年頃から、鋼製器具にUDIコードを付けようという動きが起こり、さらに二次元シンボル関連の技術革新などにより、少しずつ実現されるようになってきました。
【村田】 2006年2月、「鋼製器具二次元シンボルダイレクトマーキングガイドライン作成ワーキンググループ」として発足したのが始まりです。その年の12月、鋼製器具委員会として昇格しました。その後、もう少し広い範囲で活動したいということで、2010年7月にDPM委員会と改称し、現在に至っています。ワーキンググループ発足当時は、CJD(クロイツフェルト・ヤコブ病)の薬害問題が社会的に話題になっていた時期で、それがひとつの契機にはなりました。

本体識別コード表示における欧米の動向と日本での取り組み

近藤 秀昭 氏 に聞く厚生労働省 医政局経済課

GHTFによる識別ガイダンスは、本体への識別コード表示だけではなく、包装へのバーコード表示やデータベースの活用についても触れています。ガイダンスを見る限り、日本で対応が遅れていると感じるのは本体直接表示の部分のみです。包装へのバーコード表示については、医療機器の識別表示で世界標準となっているGS1-128が貼付されていますし、データベースについてはMEDIS-DCの医療機器データベースが活用できると考えています。日本の医療機器業界としては、AEDを除く除細動器、輸液ポンプ、シリンジポンプ、人工呼吸器の最重点4品目へのバーコード貼付を推進することによって医療機関のニーズを把握し、さらに本体直接表示の拡大に取り組む姿勢です。また、業界内での鋼製器具DPM(Direct Part Marking)の標準化に向けた作業が進んでおり、その表示技術の検証も行われています。

静岡県と東北地区に見る医療機器産業参入の現状、課題

日医工が2010年から取り組んできた「ものづくり」企業の医療機器産業参入へのアドバイス事業は、2012年に入って1つの区切りを迎えた。この2年間は東北6県を中心に多くの機能・要素部品メーカーを訪問し、医療用へどのように取り入れることができるか、いろいろと試行錯誤した期間であったといえるだろう。アドバイスするに当たり最も必要なのが、訪問地域の産業構造と技術レベル、企業姿勢を知ることであるのは言うまでもないが、実際に回ってこうした項目を1件ごとにまとめ上げるのは並大抵のことではない。しかし、そうしたデータベースを準備しないと医療機器産業への参入は現実味を帯びてこないのである。そうした情報収集と分析に追われた2年間の努力は、2010年の「ものづくり医療機器産業交流会」、2011年と2012年の「メディカルショージャパン 医療用機能・要素部品パビリオン」の開催などで実を結んだといえる。

メディカルショージャパン&ビジネスエキスポ2012
医療用機能・要素部品パビリオン in 札幌

2012年6月7日〜9日、札幌においてメディカルショージャパン&ビジネスエキスポ2012が行われたが、昨年に引き続き本年もインテリジェント・コスモス研究機構(ICR)と日医工の共催による併設展示「医療用機能・要素部品パビリオン」が開催された。展示スペースは横浜大会とほぼ同じ330平方メートル、展示参加企業が前回より若干少なかったためか比較的余裕のある空間が作られているという印象だ。今回は、東北地区と新潟県に新たに静岡県が加わり参加企業は40社、前回の横浜と比べると地の利という点で難しいところがあったと想像するが、かなり健闘した数字であったのではないだろうか。メディカルショージャパン&ビジネスエキスポ自体の延べ入場者数をみると3,739人、前回の横浜大会の約半分といった結果であった。医師・薬剤師183名、看護師789名、技師462名、医療関連業・一般が2,305名という内訳である。